トランプ米大統領が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の離脱を決めたことを受け、政府が通商交渉全般を統括する新組織の設置を検討していることが26日、分かった。日米首脳会談では通商政策も議論される見通しで、2国間協定についても新組織で対応すると見られる。ただ、政府はTPPを重視する姿勢も崩しておらず、通商政策の整合性に苦慮しそうだ。
新組織は内閣官房のTPP対策本部を改組し、首相直轄とする。来月10日で調整中の日米首脳会談における米国側の要求を踏まえた上で、正式に発足する見通しだ。対米国のほか、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉も、新組織が担当する案も浮上している。
トランプ氏は「米国の雇用・産業を守る」として、TPPや北米自由貿易協定(NAFTA)などの多国間協定に否定的な考えを示している。日米首脳会談でも、安倍晋三首相に自由貿易協定(FTA)などの2国間交渉を求める可能性が高い。
安倍首相は26日の衆院予算委で、2国間協定の交渉入りに柔軟な姿勢を示した。だが、米国との2国間交渉になれば、自動車や農産物などの分野でTPP以上に厳しい市場開放を迫られる、との懸念が政府内にはある。「米国の圧力を受け、ずるずると譲歩を余儀なくされる」(市場関係者)との指摘も根強い。
日本政府は通商政策において多国間協定を重視してきた。24日も、複数の経済閣僚が「腰を据えて理解を求める」(石原伸晃経済再生担当相)など、TPP発効に向け米国を説得する方針を表明したばかりだ。
世耕弘成経済産業相は、米国以外のTPP参加国に「早期の国内手続き完了を働きかけていく」とした。米国の要請で2国間交渉に転じれば、TPP加盟国を含む国際社会から、政府のあやふやな姿勢を疑われる恐れもある。今後、国内外に対し整合性ある説明を求められる場面もありそうだ。