■流出緩和策で被害人口20%減
経済発展が続くアジア諸国では、近年都市開発に伴い農地・林地から宅地、工業用地などへの土地利用転換が進行し、洪水などの被害が生じており、今後都市化の進行と気候変動の影響による降雨パターンの変化により、被害がさらに深刻化すると懸念されている。そこで、地球環境戦略研究機関はフィリピン大学と協力し、都市開発、気候変動による洪水リスクを軽減するための土地利用計画・管理を行うことを目的としたパイロット・プロジェクトを実施している。
マニラの南東に位置するラグナ湖には多くの河川が流入しており、その一つ、シラン・サンタローサ支流域には総人口57万人を抱える4つの自治体がある。下流域、特にサンタ・ローサ市およびビニャン市では、急速な土地利用転換に伴い、洪水などの災害が発生しており、上流シラン町での開発の進行や気候変動により、洪水被害はさらに深刻化すると見込まれている。
◆シナリオごとに検証作業
このプロジェクトでは、まず洪水の被害地域、被害人口などを把握するとともに、今後の気候変動の影響や流域自治体の開発、土地利用計画に関するシナリオを作成し、2025年における洪水リスクを予測した結果、冠水面積が20%強増加し、洪水頻度の増大、浸水期間の長期化などにより、被害人口や経済損失額の増加が見込まれた。