13日、台湾・南投県の森林公園の木陰で演奏する「親愛愛楽」の少女ら(田中靖人撮影)【拡大】
台湾の山岳地に住む先住民の少年少女で作る管弦楽団が7月、ウィーンで開かれた国際コンクールに初出場して優勝した。元は小学生が放課後に見よう見まねで始めた楽団で、手作りのバイオリンを使う子供もいる。中国からの圧力で社会の閉塞感が強まる中、国際舞台で台湾の存在感を示した先住民の子供らの活躍に、地元紙は「台湾の光」(聯合報)と喝采を送った。(南投 田中靖人)
「ウィーン国際青少年音楽祭」の管弦楽部門で優勝したのは、台湾中部・南投県の親愛小学校の在校生と卒業生で作る楽団「親愛愛楽」。学校は標高約1000メートルの山中にあり、団員75人はタイヤル族かセデック族。今回は初めての海外遠征で32人が参加した。
同祭は「音楽界の青少年オリンピック」とも呼ばれ、今年は14カ国・地域の37団体約2000人が歌や演奏を競った。親愛愛楽はモーツァルトの課題曲と先住民の歌を編曲した計3曲を民族衣装姿で披露した。タイヤル族のヤーブン・ビーユーさん(15)は「賞よりも先住民の音楽を大勢に聞いてもらえたことが誇らしかった」と話す。
台湾の先住民は現在、16部族が公認され、伝統文化の保護や地位向上策が取られている。だが、学力や家庭の経済力は平均を下回り、一部では差別も残る。遠征費用の一部を負担した外交部(外務省に相当)は「音楽で外交に力を尽くし、台湾の生命力を世界に見せてほしい」とさらなる活躍に期待している。