東芝、経営刷新後もWHの圧力認定 次々と失態噴出、信頼回復は困難
東芝が2016年4~12月期決算発表を再延期した背景には、米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)での巨額損失をめぐりWH幹部の圧力を認定し、過去の期も含め追加調査が必要になったことがある。次々と失態が噴出する東芝の内部統制の不備は深刻で、信頼を取り戻すのは至難の業だ。
「(東証)2部に降格しても、信用を確保しつつ上場廃止にならないように努力したい」。綱川智社長は14日の会見でこう述べた。だが、言葉とは裏腹に、市場の不信感は極めて大きくなった。
東芝は原発事業で発生した損失額を確定させる過程で、損失を少なく見せるようWHのダニー・ロデリック会長らによる部下への圧力があった疑惑が浮上。内部管理体制を調査する必要に迫られ、2月14日に予定した決算発表を1カ月延期した。
決算の遅れは当初、日米監査法人の調整難航が理由とされていた。だが、蓋を開けてみれば根の深さが浮き彫りになった。圧力があったばかりか、調査を行った16年10~12月期より前の期でも同様の行為が行われた疑惑も生じた。
日常的に圧力が横行していたとすれば、「チャレンジ」と称して過剰な業績改善を各事業部門に要求した不正会計問題に重なる。過去の決算も洗い出さなければならない深刻な事態だ。期限を4月11日まで約4週間程度延ばしただけで決算発表にこぎつけることができるかに疑問が残る。
東芝は東京証券取引所に内部管理体制に問題がある「特設注意市場銘柄」に指定されている。15日に改善状況の報告書を提出して指定解除や上場維持の審査を受けるが、この判断にも大きく影響しそうだ。
東芝は不正会計問題の発覚で経営陣を刷新し、企業統治改革に取り組んだはずだった。だが、柱であるはずの原発事業で一部幹部の暴走を許すなど企業統治の欠如が浮き彫りになった。にもかかわらず、佐藤良二監査委員会委員長は「かなり改善したと思う中で、特殊な状況で特殊なケースが起きた」と述べた。
綱川社長は会見で、原発事業の縮小と半導体事業の完全売却を視野に、水処理システムや昇降機など社会インフラ事業を中核に据えて、経営再建に取り組む方針を打ち出したが、今の東芝に何より必要なのは、不祥事が繰り返される企業体質の抜本的な改革だ。(万福博之)
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