熊谷部長が08年4月の部門長会議で肝臓に効くみそ汁の開発を提案したときも、役員たちの反応は今ひとつだった。専門家の間では有名なオルニチンだが、役員の大半はその存在を知らなかったからだ。そんな中で、ただ一人のオルニチンの理解者が町田東(あずま)社長だった。外部との付き合いで飲食の機会が多い町田社長は肝臓の疲れを気にする中高年の一人。すでにオルニチンのサプリメントを試しており、その効果を実感していたのだ。町田社長の「研究を進めよう」という一言で、本格的な商品開発が動き出す。
初期段階のオルニチンみそには酸味以外にも弱みがあった。発見された乳酸菌はみそ作りには欠かせない塩に弱く、通常の製法では効率的にオルニチンを生成できない。この問題を解決するため、研究チームは以前から協力関係にある大手みそメーカーに乳酸菌を持ち込む。そこで開発された手法がみその「2段階発酵」。最初に乳酸菌と大豆と麹を混ぜてオルニチンを生成してから、塩と酵母を加えるという方式だ。
次に越えなければならなかったのが、積み残されたままだった酸味の問題。オルニチンの量は乳酸菌の量にほぼ比例する。みそ汁一杯に「しじみ70個分」のオルニチンを入れるのに必要な量の乳酸菌を使うと、酸味が目立ちすぎてしまう。オルニチンを減らすことを覚悟のうえで乳酸菌を減らすことも選択肢の一つだが、普通のしじみのみそ汁に入っているしじみの2~3倍に当たる「しじみ70個分」というインパクトを損なうことになる。