主要国・地域の粗鋼生産に占める電炉鋼比率【拡大】
国内に約40社ある電炉メーカーは電気で鉄スクラップを溶かして建設向け鋼材などを製造しており、製造コストに占める電力の割合は3割程度にも上る。鉄鋼連盟の試算によると、電気料金の値上げ幅が1キロワット時当たり3円程度とすると、鉄鋼業界全体の負担増は年900億~1000億円となる。電力各社が実施または打ち出している産業用料金の2桁に上る値上げは、電炉業界にとってまさに死活問題だ。
逆風は電気料金だけではない。国内の鋼材需要低迷に加え、中国や韓国からの安価な鋼材流入が続く中、「需要確保のためには電気料金値上げ分のコストを価格転嫁できる状況にはない」(電炉業界関係者)。電炉各社は節電に取り組み、電気料金が割安な夜間や土日曜日に操業を集中するなどしてきたが、コスト削減も限界に近づいているのが実情だ。
さらに追い打ちをかけるのが、足元の円安だ。原料となる鉄スクラップの輸出が増加していることで、逆に国内では品薄になってスクラップ価格が上昇。これらの結果、電炉最大手の東京製鉄は2013年3月期決算の予想を下方修正し、最終赤字は165億円と4期連続の赤字の見通し。中堅メーカーの中山製鋼所も4期連続の経常赤字を見通しており、債権者との協議で負債を減らす私的整理での再建を目指す。