主要国・地域の粗鋼生産に占める電炉鋼比率【拡大】
新分野開拓、海外強化…生き残り模索
生き残りに向けて、電炉各社もさまざまな試みを始めた。
東京製鉄は新しい需要分野の開拓を目指し、事務機器メーカーのリコーと事務機用鋼板を共同開発した。電炉鋼板は大半が建築用として利用されているが、鉄スクラップ内の不純物を少なくし、高炉で製造される薄板並みの強度と加工のしやすさを実現したことで、電炉鋼板として初めて事務機に採用された。高炉鋼板と比べて品質に劣るとされてきた電炉鋼板で新たな道を切り開いた形だ。
一方、共英製鋼は海外に成長の糧を求める。経済成長やインフラ整備に伴う鉄鋼需要の拡大が見込めるベトナムでの事業を強化するため、現地で生産ラインの新設を進めている。
電炉メーカーはこれまで、リスクが高い海外進出や高炉メーカーと競合する薄板生産などには慎重だったが、そのビジネスモデルが崩れ始める中で、新たな戦略を打ち出し始めた。
国内の粗鋼生産量約1億トンのうち電炉鋼は約4分の1を占めるが、世界全体では電炉鋼が約3割のシェアを持ち、米国や欧州連合(EU)、韓国では4割以上だ。日本では高炉で作る高級鋼材需要が多いためだが、世界比較からみれば成長の余地は残されているといえなくもない。
だが、割高な電気料金を背景に国際競争力を失い、国内工場がほぼ姿を消したアルミニウム産業の前例もある。電炉業界がその二の舞いとなるのか。電炉メーカーは“試練”のときを迎えている。(橋本亮、兼松康)