2011年3月までの約6年間社長を務めた前田氏は、主要ブランドへの集中投資で各分野でのトップシェア獲得を目指す「メガブランド戦略」を成功させた。国内ではヘアケアの「TSUBAKI(ツバキ)」、メーキャップの「マキアージュ」といった新ブランドをヒットに導いた。資生堂のブランド力を一段と高めた前田氏の手腕に、業界関係者は一目置いた。
また、海外戦略でも、攻めの経営を貫いた。米化粧品会社「ベアエッセンシャル」を買収する一方、中国の販売網を構築するなど、グローバル経営の基礎を築いた。
ただ、成長軌道は長く続かなかった。業績が傾き出すと、批判の矛先は大物経営者である前田氏に向いた。
「メガブランドに固執するあまり、後に細分化した消費者の嗜好(しこう)に応えきれなくなった」「販売チャネルの構造変化への対応が遅れた」「ベアエッセンシャル買収に伴う巨額ののれん代が財務を圧迫している」など、任期後半の経営に関しては疑問視する声が多い。