今年1月には半世紀以上にわたってスキンケア製品などを製造してきた鎌倉工場(神奈川県鎌倉市)の閉鎖を打ち出すなど、大型のコスト削減策も発表した。
だが、業績悪化に歯止めがかからぬまま、2月頃から体調に不安を感じるようになり、同月半ば頃、前田氏に進退を含めた相談を持ちかけたという。末川氏は会見で「課題の解決に向けていくつもの手立てを打っているので全うしたい気持ちはあるが、全力疾走が困難な健康状態にある」と唇をかんだ。
資生堂の構造改革について、大和証券の広住勝朗シニアアナリストは「思い切った取捨選択と、過去のしがらみを断ち切る勇気が必要」と指摘する。業界首位の資生堂は、多くの商品分野と販売チャネルに手を伸ばす“全方位外交”を展開してきたが、選択と集中を急ぐ事態に追い込まれた。
「あらゆる領域、聖域のないところで棚卸しをすることも含めて、しっかりと見直しながらやっていく」。そう断言した前田氏の次の一手には、以前にも増して厳しい視線が集まりそうだ。(豊田真由美)