◆大きな仕事への布石
メイヤーCEOの行った買収のなかで議論の的になったのが、ニュース記事を350ワードに要約するモバイルアプリSummly(サムリー)の買収だ。サムリーは、ロンドン在住の17歳の少年が200万ドル(約2億322万円)未満の初期投資を得て生み出したサービスで、ヤフーは今年3月、これに3000万ドルを支払ったとされる。創業者が若く、7人の従業員しか持たず、消費者をひきつけてもこなかったスタートアップに、同社がなぜこれほどの額を提示したのかと疑問を投げかける人もいるが、メイヤーCEOの発したメッセージは明らかだ。モバイル戦略は要であり、ニュースはヤフーの重大な柱の一つだ。この部門でヤフーの現在のラインアップに欠けている技術の隙間を埋めるために、メイヤーCEOは出費を惜しまないということだろう。買収後すぐにサムリーのサービスは停止され、4週間後には、その技術がヤフーの製品に組み込まれていた。
ただ、収益ゼロの小規模スタートアップの買収は、株式時価総額290億ドルという同社に重大な影響を与えることにはならない。これらの買収とサービスの組み込みは、同社のサービスに新しいものを加えて充実させることで、ユーザーを飽きさせず、時価総額を維持するためのものと考えられる。
また、ヤフーはイメージ上の問題を抱えている。2005年にフリッカーやデリシャスが買収されたとき、これらのスタートアップは大変人気があり、創業者らはスタートアップ・コミュニティーで発言力を持つメンバーと密接に結び付いた「有力者」であった。買収されてからの彼らの経験はひどいもので、創業者はどちらも官僚主義的な企業文化にいらだちを募らせ、ヤフーとの契約満了後すぐさま同社を去っている。