ダイキンの技術が普及すれば、デファクトスタンダード(事実上の業界標準)を構築でき、将来的にビジネスが有利になるメリットもある。
同社はかつて、中国の空調大手、珠海格力電器に対し、きめ細かく温度を制御し、省エネ運転できる「インバーター技術」を無償供与した。当初は社内で反対意見も多かったが、中国でインバーター技術のデファクトスタンダードを握ることに成功した。
しかし、最新技術を気前よく公開すれば、人件費の安い新興国メーカーに格安品を販売され、「恩をあだで返されるリスク」(関係者)も懸念される。
それでも、井上会長は自信満々だ。
「どんなに新しい技術もいずれは必ず追いつかれる。ライバルに負けないよう、当社はさらに新しい技術を生み出します」
その経営手法は液晶やテレビ、半導体などで価格競争に敗れた日本の電機メーカーとは一線を画す。激しさを増す世界的な競争の下で日本企業が生き残る成功モデルの一つといえそうだ。(中山玲子)