首都圏は、全国の電力需要の3割を占める東電の牙城だった。同社の販売電力量は関電や中部電の約2倍もあり、本来ならつけいる隙はなかったはずだ。
しかし、東電は原発事故で自らの城を守る力を失った。10月1日現在、東電管内で新電力と契約している顧客は2万8000件(560万キロワット)を超え、昨年4月1日時点の1万6550件(430万キロワット)から大幅に伸びた。
「首都圏の電力需給がピンチにならないのは、新電力の参入があってこそだ」と、東電の担当者は淡々と解説する。しかし顧客が無制限に奪われれば、東電の経営はますます悪化する。
関西のメーカー幹部は「東電の弱みにつけ込んだやり方で、ある意味えげつないが、関電と中部電の必死さも分かる」と語る。首都圏を舞台に電力各社の“仁義なき戦い”が始まろうとしている。