【九州の礎を築いた群像 JR九州編(1)】「ななつ星in九州」前編 「鉄道そのものが観光になるんだ」唐池社長、四半世紀の夢 (1/5ページ)

2014.1.6 14:32

初公開された「ななつ星in九州」の車両前で記者会見に応じる水戸岡鋭治氏(左)と唐池恒二氏。2人の思いが結実した=平成24年9月13日、小倉総合車両センター(安部光翁撮影)

初公開された「ななつ星in九州」の車両前で記者会見に応じる水戸岡鋭治氏(左)と唐池恒二氏。2人の思いが結実した=平成24年9月13日、小倉総合車両センター(安部光翁撮影)【拡大】

 平成22年の1月だったか、2月だったか。工業デザイナー、水戸岡鋭治(66)=ドーンデザイン研究所代表=はよく覚えていない。

 九州旅客鉄道本社(JR九州、福岡市博多区)の社長室をぶらりと訪ねたところ、第4代社長の唐池恒二(60)は、いつものように、にこやかに席を勧めた。ふと真顔になり、こう切り出した。

 「水戸岡さん、実は九州を一周する豪華寝台列車の旅行を考えているんです。面白いと思うんですが、どうでしょうかね?」

 水戸岡は即答した。

 「やめてくださいよ。冷静に考えて、もうかるわけないじゃないですか。予算も時間もかかるし…。どう考えても今の時代ではできませんよ」

 だが、唐池の表情は真剣そのものだった。水戸岡がのぞき込むように「本気ですか?」と念を押すと、唐池は深くうなずいた。

 水戸岡は内心飛び上がらんほどうれしかった。JR九州のほぼすべての車両デザインを手がけてきた水戸岡は、豪華寝台列車こそが「将来の鉄道のあるべき姿だ」とかねて思っており、その企画・設計を夢に見ていたからだ。

 だが、唐池に進言した通り、採算を考えると割に合わない。決して経営が楽ではないJR九州がまさかその夢を叶(かな)えてくれるとは-。水戸岡はこう言った。

 「じゃあ、やりましょう。誰もが驚くような豪華寝台列車を一緒に作りましょう!」

 この瞬間、「ななつ星in九州」のプロジェクトは動き出した。

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