ターゲットを絞り込むため、顧客の反応を直接獲得できるダイレクト・マーケティングを重視し、販売は同社のオンラインショップに限定。自分撮り動画の分野で著名なブロガーに製品レビューを書いてもらったり、ダンススクールや音楽専門学校などにデモ機を貸し出して使ってもらったりして、認知度を上げていった。昨秋に開催したパフォーマンス動画のコンテスト「KING OF やってみた選手権」も、製品のファンを増やす工夫だ。
製品の広告動画や選手権の告知は、動画サイトを中心に配信。発売した昨年9月には、ドイツ版ユーチューブで広告動画が1000万回視聴され、広告部門で3位となる快挙も成し遂げた。オックスフォード英語辞典などを出版する英オックスフォード大出版局は2013年を代表する英語の言葉として、自分撮り写真を意味する「セルフィー(SELFIE)」を選出した。自分撮りは世界的に認知されている。
マーケティングを担当したキヤノンマーケティングジャパン・イメージングシステムカンパニーのチーフ、藤中炎さんは「単独での山登りで風景に自分を入れた写真を撮ったり、結婚式で高砂にカメラを置いて新郎新婦を撮影したりするなど、こちらが想定した以上の使われ方をしている」と胸を張る。「動画の楽しみ方を広げたい」「新市場を作りたい」という開発陣の思いは、ユーザーに確かに届いている。(松田麻希)