それを裏付けるかのような出来事が、3月に名古屋で起きた。同社が新規開店した米国風レストラン業態「TGIフライデーズ」のアルバイト募集で、70人の採用枠に約200人もの応募が殺到したのだ。
「若者向けの新鮮なイメージが『働きたい』という人気につながっている。残念ながら、同条件でも居酒屋『和民』の募集では5人くらいしか集まらない」。担当者はそう打ち明ける。
このためワタミは人材確保に向け、転勤がない「エリア限定社員」の福利厚生を充実させるなど、雇用条件の改善にも取り組む。
外食産業に詳しい野村証券の繁村京一郎シニアアナリストは「『ブラック』の悪評は払拭に時間がかかり、経営上の大きなリスクになる」と、地道な改善の必要性を指摘する。
コストを抑えて手頃な価格の酒食を提供し、店舗網の拡大へと突き進んできたワタミ。そうした過去の戦略と決別して雇用環境を改善した先に、どんな再成長の青写真を描くのか。カギとなるのは、「総合居酒屋から専門店への転換」だ。