■コクと香り 総力戦で再活性化 ブランド価値を丁寧に訴求
≪STORY≫
景気回復で消費者の財布のひもが緩んだことも追い風に、大手各社が商品開発や販売競争でしのぎを削る高級ビール。同分野のシェア約6割を占め、高級ビール市場を成長させた“立役者”が、サントリー酒類の主力商品「ザ・プレミアム・モルツ(プレモル)」だ。5月には、フルーティーな味のエールビール「香るプレミアム」を発売するなど、派生商品でファンの裾野を広げている。プレモルの持ち味であるコクと香りを「再活性化」させた開発担当者の努力と、地道な営業活動がヒットを生んだ。
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「研究を続けていたが、ゴーサインがかかって正直驚いた」
現在、サントリー武蔵野ビール工場(東京都府中市)の工場長を務める岡賀根雄さんは、商品開発研究部部長としてプレモルのリニューアル(刷新)に着手した3年前をそう振り返る。
プレモルはかつて年間販売量100万ケースにも満たない“弱小ブランド”だったが、2005年に人気に火が付き、その後3年間で1000万ケースを突破。さらに09、10年も対前年比の伸び率が2桁を超える快進撃を続けていた。その最中に行う製品刷新とあって、社内にも驚きが広がったのだ。
風味を変えれば、人気に水を差すことにならないか-。懸念はそれだけではなかった。プレモルは、食品の国際審査会「モンドセレクション」で05年から最高金賞を3年連続受賞。その快挙を前面に打ち出した宣伝戦略を進めてきたが、リニューアルすれば、最高金賞の称号は使えなくなる。
しかし、ビール事業を統括する鳥井信吾・サントリーホールディングス副社長は、こう力説した。「現状に満足してはならない。世界最高峰のビールを目指し続けよう」