電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は2月20日の会見で安(あん)堵(ど)の表情を浮かべた。法案の付則に発送電分離にあたって、電力の安定供給に支障がないかを検証する「検証規定」が盛り込まれたからだ。八木会長は検証結果によっては、発送電分離の延期を求める考えも示した。念頭にあるのは電力自由化や発送電分離後の原発の扱いに対する危惧だ。
日本では、出力100万キロワット級の原発の設置コストが3千億円程度とされ、同規模の天然ガス火力発電所の3倍にあたる。巨額のコストを回収する仕組みがなければ、火力や再生可能エネルギーといった他の発電設備との競争に敗れる恐れがある。
また、大手電力は原発廃炉に伴い、1基あたり約210億円の損失が生じる。経済産業省は廃炉損失を10年かけて償却できる仕組みとし、電力会社の負担を軽減した。また原発の廃炉費用を電気料金に上乗せする「総括原価方式」が、電力小売りの全面自由化後になくなることを受け、送電線の利用料(託送料)に廃炉費用を織り込むよう、省令を改正する方針だ。
それでも原発を持つ大手電力が、自由化後の競争環境下で経営を維持できるかは見通せない。
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こうした中で、1990年に世界に先駆けて電力自由化を実施した英国が2013年、原発に対して固定価格買い取り制度(FIT)の導入を決めた。電力業界に詳しいシンクタンクの関係者は「FITは、市場をゆがめるとして、英政府が最も嫌ってきた手法だ」と解説する。英国が嫌悪する施策に踏み出さざるを得なかったのは、自由化以降、安価なガス火力発電などに設備投資が集中し、原発の維持が困難となったためだ。