こうしたやりとりを8回繰り返して納得の色に仕上がると、カクテルシェーカーに同じ割合でインクを投入しシェーカーを振り、完成したオリジナルインクを50ミリリットル入りの瓶にぴったり収めた。結婚式のエンディングに使ったという大好きな曲を、その色の名前にした女性は「一番幸せな結婚式当日の青空をイメージした」とうれしそうに語った。
イメージに合わせ
石丸氏はインクを通じて万年筆の楽しさを広めるため05年に工房を開始。「欲しい色のイメージがつかみ切れていないお客さまが多い」(石丸氏)ため、会話を大事にしながら12色のインクを調合して好みの色を作り出す。再注文に応えられるように、レシピ帳には1万2000を超える色のデータが残されている。石丸氏は「100人100色。誰もが喜んでくれる」とシェーカーを振り続ける。
納得できるまで付き合ってくれる石丸氏のファンは多く、熱狂的な「追っかけ」も出現。今回の工房でも3日間全てに足を運んだ女性や、前週から合計5色を新たに作った女性が来ていた。