ゆうちょ銀行の預入限度額とかんぽ生命保険の加入限度額の引き上げ議論をめぐり、親会社の日本郵政と自民党との温度差が目立っている。来夏の参院選で集票力をもつ全国郵便局長会から支援を得たい自民党が政府に早期引き上げを迫るが、日本郵政の西室泰三社長は22日の会見で「地域金融機関との協調を進める方が重要だ」と述べるなど後ろ向きとも取れる発言を繰り返す。「暗黙の政府保証が残る状態」(全国地方銀行協会の寺沢辰麿会長)での引き上げに民間金融機関の反発は激しく、着地点は見通せない。
運用益確保が課題
「日本の金融業界全体からみて正しい方向かどうか疑問だ」
西室社長は4月23日の会見でもこう述べ、「郵政事業に関する特命委員会」で限度額引き上げを議論していた自民党側に冷や水を浴びせた。今月22日の会見では「(今秋に予定するグループ3社の)上場は、現在の規制がそのままあるという条件でやっていく」と説明した。
自民党の提言通り、株式上場の前に限度額引き上げが決まれば初値が高騰するのは間違いない。それでも西室社長が慎重な姿勢を崩さない背景には「超低金利状態が長期化する中、貯金規模だけが膨らんでも運用益を確保することは容易ではない」(ゆうちょ銀関係者)という事情がある。