シャープ本社を訪れ、報道陣の取材に応じる鴻海精密工業の郭台銘会長=5日午後、大阪市阿倍野区(彦野公太朗撮影)【拡大】
シャープの経営再建をめぐる台湾の鴻海精密工業とシャープの交渉は早くも両社の不協和音をうかがわせる展開となった。鴻海の郭台銘会長が優先交渉権の取得をアピールしたのに対し、シャープ側は即座にその事実を否定。両社の主張に食い違いが生じている。鴻海はなぜシャープの買収を急ぐのか-。
「交渉のハードルは90%乗り越えた」
5日午後5時半すぎ、大阪市阿倍野区のシャープ本社。報道陣の前に笑顔で現れた郭会長はシャープの買収に自信をのぞかせた。
「郭会長はシャープのすべてを欲しがっていた」
鴻海関係者は買収の狙いをこう解説する。
家電や電子機器などの組み立てという業態で世界有数の企業に成長した鴻海はあくまでメーカーの下請けという“黒子”だ。消費者の手にわたる最終商品を手掛けるシャープを傘下に加えることは、ブランドの入手とともに、メーカーとして表舞台に躍り出ることを意味する。ただ、郭会長の今回の性急な動きからは同社の受託製造というビジネスモデルが限界にきていることへの焦燥感もうかがえる。