■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ
1月26日に、フォードが日本市場から撤退を発表したのは唐突だった。予兆のようなものが一切見当たらなかったからだ。現に、2月初旬に予定されていた輸入車組合の合同試乗会には、例年通り参加する予定だったし、その翌週には『エクスプローラー』のトップモデル「タイタニウム」のメディア試乗会も予定されていたのだ。
合同試乗会には参加を取り止め、「タイタニウム」の試乗会は急遽中止された。メールだけでなく、わざわざ広報マネージャー氏が電話をくれて、中止の報告と撤退について丁寧に説明してくれた。撤退がある程度前から予定されていたのなら、どちらの試乗会も計画されることはなかっただろう。いかに急だったかがわかる。撤退する理由は、投資に対する収益が見込めないという主旨のことが発表されたが、僕は少し違った考えを持っている。以前、アメリカからフォード・ジャパンに赴任してきたマーケティング部長氏に意見を求められたことがあった。次のように提言した。
「特徴の際立った、いわゆるニッチなモデルから入れていくべきだ。『フォーカス』はとてもいいクルマだけれども、台数がたくさん出るノーマルグレードをヨーロッパやアメリカなどと同じようにたくさん売るのは、時期を待ったほうがいい。日本もディーラーをたくさん作ってからでないと。それまでは、『フォーカス』だったらRSやSTなどのスポーツモデルから入れて、ファンと応援団をキチッと確保したうえで増やしていくべきではないか」