KDDIの「auでんき」を勧めるauショップ店員=東京都新宿区【拡大】
【変わる 電力小売り】(中)
2015年5月、東京電力の小早川智明常務執行役らは、わずか10分程度の動画に目を見張った。16年4月の電力小売り自由化に向けた提携交渉の席上。ソフトバンクが東電に提示したのは、社内向けに作成した携帯電話販売店の従業員用の“教材”だった。
若者から高齢者まで幅広い消費者を対象に、スマートフォンなどを販売するには、機能をかみ砕いて説明した上で、消費者が表現できないニーズをもくみ取って商品を提案する「営業力」が求められる。ソフトバンクの動画に盛り込まれた社外秘の営業ノウハウは、小早川氏ら東電幹部の心を動かした。
東電は1999年、保有する光ファイバー網と無線を使った低価格の高速インターネットサービスで、ソフトバンクと提携した。しかし、当時はアナログ回線を使ったADSL(非対称デジタル加入者線)が主流。ソフトバンクもADSLに力点を置いて加入者数を伸ばした。結局、東電は2003年にソフトバンクとの提携を解消し、06年に光通信事業から撤退した経緯がある。