2015年度業績予想の修正記者会見で説明を行い席に戻る室町正志代表執行役社長=26日午後、東京都港区・東芝本社ビル(納冨康撮影)【拡大】
東芝は、WHが抱える“負の遺産”の解消に踏み切った。事業の柱のひとつだった医療機器子会社もキヤノンに売却し、今後はエネルギーと半導体の両事業を中心に再起を図る。ただソニーから独立したVAIO(バイオ)や富士通との間で進めていたパソコン事業の統合交渉は白紙に戻り、再生への道のりは多難だ。経営の健全性を示す株主資本比率も5・5%と危険水域にあり、財務体質の早期改善が求められる。
東芝がWHを買収した際のブランド価値に当たる「のれん代」の大部分を取り崩し、減損処理を実施する、と報じられた前日の18日から26日までの間、東芝の株価は8・2%も上昇した。だが、東芝の室町正志社長は26日の会見で、険しい表情のまま、こう述べた。
「財務体質が安定化したとは決して言えない」
確かに株主資本比率は従来予想の2・6%から5・5%に改善した。だが、平田政善上席常務が「電機メーカーとしては30%は欲しい」と述べたように、安定的な財務状態には、ほど遠い状況にある。
富士通、VAIOとのパソコン事業の統合交渉は、生産拠点の集約や出資比率などで折り合いがつかず、白紙となった。東芝は「粘り強く、さまざまな選択肢を検討している」(室町社長)と、海外大手への事業売却なども模索する。だがパソコン事業の再編の遅れは、構造改革全体の遅れにもつながる。
WHの資産評価の見直しによる減損処理で、本業のもうけを示す営業損益の赤字幅は6900億円にまで膨らむ。室町社長は「原子力事業は粛々と計画どおりに進んでいる。前向きに進めたい」と自信を見せる。だが、もうひとつの柱となる半導体事業は、韓国サムスン電子などライバルとの競争が激化し、楽観はできない状況だ。
自らの進退について、室町社長は「指名委員会にすべてお預けしている」とし、「連休明けがひとつのめどだ」と述べ、近く正式に決定する見通しを示した。5月12日に予定する平成28年3月期連結決算発表までに、明らかになる見通しだ。新体制になっても、綱渡りの経営は避けられそうにない。(宇野貴文)