たとえば、甘さを十分に引き出すために、比較的低い温度で、長い時間をかけて芯までふっくらと焙煎することにした。とはいえ、あまり時間が長いと甘さが残りすぎてしまい、健康ミネラルむぎ茶本来の、すっきりとした味わいが損なわれてしまう。大量生産も難しくなる。
そこで試行錯誤の末、最後に温度を上げ、表面を香ばしく焼き上げることで、適度な甘さと香ばしさ、キレのよさを両立させるのに成功した。
一方、原料のバランスも考える必要があった。いくら甘くするといっても、二条大麦の量を増やしすぎると、今度は六条大麦の持つ香りが損なわれてしまう。
井上さんは「(香りと甘さは)相反する関係。なのに、(会社は)甘さを出して、香りもさらに良くしてほしいという。とても難しかった」と振り返る。
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そうして何とかレシピを完成させたが、むしろ工場で作れるよう落とし込むのがそれ以上に大変だった。伊藤園は、飲料大手には珍しく、自前の焙煎工場を持つ。中でも、静岡県牧之原市にある麦茶専用の坂口工場は、日本最大規模の巨大なロースター(焙煎機)を備える。このロースターは大量生産に適しているだけではない。麦を十分に蒸してから2回焙煎する「二段焙煎」と、熱した空気を利用して焦がさずに焙煎する「熱風焙煎」を駆使することで、六条大麦の香りをより引き出すことができる。