ところが、豊田社長の思い描くレクサスのクルマづくりは、それよりはるか先にある。2014年、「レクサスを変えてほしい」と言って、福市をデザインだけでなく、そもそもレクサスとはどうあるべきかという方向性までを司るプレジデントに据えた。北米モーターショーで発表した大型ラグジュアリークーペ「LC500」は、レクサスの新しい挑戦の名刺代わりのようなモデルで、実はこれがスタートラインだ。
今このようなクルマを世に問えるのは、本体のトヨタが2兆円をゆうに超える純利益を確保するなど潤沢な資金力があるからだ。かりに逆風にさらされ、経営危機に陥ったとしても同じようにレクサスを光らせるための挑戦を続けられるのか。今はまだ、レクサス改革はある種の“ノリ”をエンジンとして前進しているにすぎない。その裏で求められているのは、ブランド創設以来ずっと欠いてきた“覚悟”の有無なのだ。
(文中敬称略)
(ジャーナリスト 井元康一郎=文)(PRESIDENT Online)