
アクセルスペースを率いる中村友哉氏【拡大】
◆車の部品など使用
--宇宙開発に長年携わる大企業には技術もノウハウも部品もあるはずですが、アクセルスペースの超小型衛星はなぜ価格や重量をそれほど下げられるのでしょう
「エンジニアリングの観点から言えば、超小型衛星は通常の衛星のサイズを小さくしたものではないというのが重要な点です。逆の発想で、私たちはもっと小さな衛星から現在の超小型衛星へと進化させたのです。超小型衛星は30~50立方センチメートルですが、私が学生の頃に取り組んでいたのは10センチメートルの立方体で重さは1キログラムしかありませんでした」
「NASA(米航空宇宙局)やJAXA(宇宙航空研究開発機構)、そして日米の大企業が長年集中して取り組んできたのは1000億円規模の国家プロジェクトですから、一つのイノベーションに賭けるより何が何でも失敗を防ぐという文化が醸成されます。航空宇宙用の規格に準拠した宇宙用部品は非常に高価で数も限定されているので、私たちは衛星内部に産業用や自動車用の一般的部品を使います。宇宙用部品ならば、一つ調達するのに半年かかることも普通なので、私たちの超小型衛星は納入までの期間という点でも有利です」
--創業チームは東京大学と東京工業大学の学生時代から超小型衛星開発で切磋琢磨(せっさたくま)してきました。起業にあたって大学からの支援がありましたか
「東大は最近、起業家育成教育に力を入れ、創業者を積極的に支援しています。多くのベンチャーが大学から出てきた結果、創業者としての生き方が身近になることで、東大から起業を目指す人が増えているのだと思います。産学官連携の取り組みで、大学の持つ技術を活用したベンチャー育成を政府が支援しており、私たちはそうしたプログラムの恩恵を受けることができました。とても良い仕組みですが、起業支援の方法には疑問も残ります」