ゆっくり走るタートルタクシー。ボタンを押すと運転席のランプが点灯し、減速する仕組みだ=横浜市港北区の三和交通本社【拡大】
■ゆっくり走る、ペット同乗…
乗務員の高齢化や初乗り運賃値下げの動きなど厳しい経営環境が続くタクシー業界。三和交通は柔軟なアイデアに伴う斬新なサービスを次々打ち出し、顧客と人材の獲得につなげている。成熟産業と呼ばれて久しいタクシー業界の中で存在感を高めながら、「品質とサービスで選ばれるタクシー会社を目指す」(吉川永一社長)と意気込んでいる。
◆利用者の変化に対応
「ふとした思いつきがサービス向上につながる」。2013年に始めたゆっくり走る「タートル(亀)タクシー」は、吉川社長と社員との会話で浮かんだアイデアを具現化したものだ。
タクシー利用者の中には、急発進や急加速を敬遠し、安全運転を望む人も一定の割合で存在するが、「運転手に『ゆっくり走って』と言いづらい」ことがアンケートから判明した。ゆっくりした速度での走行を望む乗客が後部座席に設置されたボタンを押すと、運転席のランプが点灯。乗務員が速度を落とす仕組みだ。
「タクシーは急いでいる人が利用する」とした従来の発想を覆したタートルタクシーはたちまち話題となり、この年の「グッドデザイン賞」を受賞した。現在では神奈川県内と東京都内で走行する約570台の車両のほとんどにタートルタクシーのボタンが設置されている。