
東芝の本社=東京都港区(三尾郁恵撮影)【拡大】
東芝の経営再建にブレーキがかかった。米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を通じて買収した米原子力サービス会社の資産価値の見直しで巨額の損失を計上することで、脆弱(ぜいじゃく)な財務基盤がさらに毀損(きそん)する。東芝は原発事業を今後の成長の柱に位置付け、2030年度までに新規受注45基を目標に掲げるが、事故発生時の賠償請求や建設計画の頓挫などのリスクがつきまとい、業績回復が遠のく可能性もある。
東芝は原発事業と並ぶ柱と位置付ける半導体事業が好調で、17年3月期の最終損益は1450億円の黒字(前期は4600億円の赤字)転換を見込む。しかし、巨額損失の規模によっては3年連続の赤字を余儀なくされそうだ。
東芝は、WHの事業や資産の価値を引き下げ、16年3月期に約2600億円の損失を計上した。
それでも、東芝グループは世界の原発市場でトップシェアの26%を握る。世界で新規建設の300基の市場があると想定し、中国やロシアのメーカーの台頭でシェアが15%に下がっても45基は受注できると試算する。
東京電力福島第1原発事故で日本国内では原発の新設が見込めないが、二酸化炭素(CO2)削減のニーズや新興国の電力需要が高まるのを背景に国外で商機獲得を狙う。WHは米国と中国で計8基の原発を受注し、着工済み。インドでも6基を建設する計画だ。