
東芝の資本増強策をめぐる3つのシナリオ【拡大】
東芝が資本増強を迫られている。巨額の損失計上により、弱い財務基盤が一段と不安定になるのは必至で、債務超過に陥る恐れもあるからだ。資本増強策には「増資」「事業切り売り」「金融機関の支援」という3つのシナリオが浮上。主要取引銀行の協力を仰ぐのが最も現実的だが、巨額損失への不信感は根強く、支援に向けた協議は難航する恐れもある。
債務超過の恐れ
東芝は財務の健全性を示す株主資本が2015年3月末に1兆円以上あったが、不正会計問題で損失を計上し、9月末時点で3632億円に減少した。原発事業での新たな損失で、負債額が株主資本などを含めた資産額を上回れば債務超過になる。東京証券取引所の上場廃止基準に抵触し、再建への道のりはさらに厳しくなる。
綱川智社長は「資本増強を検討する」と財務改善が急務と語る。
資本増強策でまず想定されるのが増資だ。しかし、東証から投資家に注意を促す「特設注意市場銘柄」に指定されており、株式を発行して不特定多数の投資家に売る公募増資のような資金調達は困難だ。
取引先企業に株式を引き受けてもらう第三者割当増資も、原発事業のリスクが顕現化する中で、「企業が手を挙げるのはかなり難しい」とSMBC日興証券の嶋田幸彦シニアアナリストは指摘する。