第1の仮説は「朴大統領スキャンダル」の影響だ。 アップルが直営店の韓国進出を検討しているとの観測は、実は昨年11月ごろからウォールストリート・ジャーナルやIT専門誌で浮上していた。この時点ではアップルは報道内容の真偽に触れなかったが、年が明けるとすぐに広報担当者のコメントの形で進出準備を認めた。この時間軸で韓国では何が起きていたか。
昨年11月といえば、朴大統領と長年の友人の崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入疑惑事件に関し、サムスンをはじめとする韓国の大手財閥が崔氏に便宜を図ったとの問題が噴出し、朴政権と大手財閥との癒着に強い批判の目が向けられ始めた時期だ。朴大統領が弾劾され、疑惑への検察当局の捜査が本格化したのが同12月。そして韓国最大の経済団体で、政府と経済界のパイプ役となっていた「全国経済人連合会」(全経連)からの脱退をLG電子が宣言するなど、“朴スキャンダル”が政府と大手財閥との長年の“蜜月関係”を根本的に揺るがす事態に発展したのが年明け直前だ。
10年もアップルが韓国に直営店の投資をしなかったことについては、ネット上などに韓国の消費者から不満とともに疑問の声が上がっていた。その理由についてはサムスンを筆頭とする国内メーカーの地元経済界への強力な影響力、国内ブランドへの韓国消費者の強い支持との見方ほか、輸出振興や国内メーカー育成のためにさまざまな形で便宜を図る政府の意向が働いているとの指摘があった。このうち2つの要素に大きな変化はないが、政府の影響力についてはアップルが戦略を見直すに値する決定的な状況変化が起こったわけだ。