
携帯電話であらゆる情報を―。現在の「当たり前」を生み出した中心メンバーは榎啓一、夏野剛、松永真理(上から時計回り)の異なる才能を持った3人だった【拡大】
「携帯電話とインターネットをつなげて、なんかするみたいよ」
夏野は、ネットに疎い松永から、そう誘われたことを覚えている。だが、夏野はその説明に膝を打ったという。
「そうだ、その手があったか!」
異業種にも広がり
「栗ちゃん! iよ、アイだわ!」
iモード開発部隊の栗田穣崇(しげたか)(44)は、松永と一緒にオフィス街を歩いているとき、突然、そう話しかけられた。
「携帯ゲートウェイ」と呼ばれていたサービスにどう名前を付けるか。松永にとって大きな課題だった。「ダイナリー」「オスカル」…。広告代理店が次々と持ち込むアイデアに松永は数カ月間、首を振り続けていた。ひらめいたのは空港の情報カウンターなどに使われる「i(アイ)」の文字。その下に栗田が「モード」を付けた。
iは印象の柔らかい小文字。子音が「m」の言葉には「もりもり」「むくむく」など肉感的なイメージがある。「モード」にはデジタルだが温かいイメージ。五七五調に通じる5文字、そして濁点を含む音感。「とらばーゆ」でも生かされた、松永の名付けのノウハウが随所に盛り込まれていた。