数カ月後、くしくも米アップルコンピュータが新型パソコン「iMac」を発表。「iPhone」は言うまでもなく、「iPS細胞」など異業種にも広がった。「i」は時代の波を捉えていた。
当時、多くのメーカーも電子手帳型の情報端末を発売していた。しかし、どれもヒットしたとは言えなかった。榎が目指したのは、新技術を盛り込むことではなく「電話と考えてもらうこと」だった。
ウィンドウズ95の発売から2年。インターネットという言葉は広がりつつあったが、「パソコンは怖いモノだった。フリーズすると『あなたは不正な操作をした』と出て、作っていた文書が消えちゃう」。パソコンだと思われれば、売り上げは2桁、3桁下がる。
新端末に、社内からは「画面が小さいんじゃないか」という批判があがったが榎は耳を貸さず、「インターネット」や「ダウンロード」という言葉も使わなかった。