だが、世界的な安全規制の強化で事業環境が厳しくなる中、買い手候補は少ない。三菱重工業は、経営危機に陥った仏アレバの支援で手いっぱいの状態。日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、原発への投資に慎重な姿勢をとっている。中国やロシアは、安全保障上の理由で米政府が認めない可能性が高い。候補といえるのは、海外進出に積極的な韓国電力公社ぐらいだ。
一方、綱川社長は破産法の適用について、「いろいろな選択肢があるが、現状で決まったことはない」と述べるにとどめた。建設中の原発4基中、2基に米政府が83億ドル(約9500億円)の債務保証を行っており、破綻すれば国民負担が生じる可能性もあることから、慎重になっている面があるとみられる。
さらに、原発を発注した電力会社がWH破綻で計画通り原発を稼働できず、米政府から税制優遇を受けられなくなり、東芝に補償を求める可能性もある。
東芝はWHに対し債務保証を行っており、3千億円弱の新たな損失を背負い込むとの試算もある。
ただ、追加損失が発生したとしても、1・5兆円程度が見込まれる半導体メモリー事業の売却で補える可能性は十分ある。大手金融機関の首脳も「原発事業の債務額を確定させるという点において(破産法は)有効な手法」と認める。負の連鎖を完全に断ち切るまでには、なお曲折が予想される。