【高論卓説】「技術の東芝」、暗転の伏線 原子力事業に傾斜が落とし穴 (2/2ページ)

2017.3.27 06:04

米ウェスチングハウスが建設しているボーグル原発3、4号機の冷却塔=米ジョージア州(共同)
米ウェスチングハウスが建設しているボーグル原発3、4号機の冷却塔=米ジョージア州(共同)【拡大】

 からくり人形に驚く子供の姿をスマートフォンで撮影する、親の意識下に東芝のかつてのCMソングが流れているように思う。私もそうだった。東芝はかつてテレビの「日曜劇場」の単独提供スポンサーだった。「光る 光る 東芝」で始まり、最後は「明日を創る技術の東芝がお送りする」とナレーションが入る。「技術の東芝」は今も、人々を科学館に足を運ばせるのではないか。

 東芝が新しいコーポレートブランドとして「Leading Innovation」を掲げて、「TOSHIBA」のロゴと組み合わせたのは2006年のことである。

 この年はくしくも、東芝が16年4~12月期の決算発表の延期に追い込まれた要因となっている、米原子力発電子会社のウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を買収し、原子力事業を経営の柱にしようと図ったときである。

 「技術の東芝」の象徴的な存在である舛岡さんはその後、研究現場から外される形になったことから退社して、母校の東北大学の教授となり、名誉教授となった現在も研究を続けている。教授時代にメモリーの特許の発明の対価を求める民事訴訟を提起、和解となったときに、東芝から支払われたのは8700万円だった。

 東芝は皮肉にも今、イノベーションの成果ではなく、かつての技術によって経営危機をしのごうとしている。

【プロフィル】田部康喜

 たべ・こうき 東日本国際大学客員教授。東北大法卒。朝日新聞経済記者を20年近く務め、論説委員、ソフトバンク広報室長などを経て現職。62歳。福島県出身。

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