
2016年5月18日、燃費データ測定の不正を国交省に報告した後に会見し、冒頭、謝罪するスズキの鈴木修会長(左から2人目)ら=国土交通省【拡大】
スズキが、自動車の燃費データを不正に測定していた問題を公表してから18日で1年が経過する。三菱自動車のように燃費の水増しといった悪質性はなく、販売影響も限定的だったが、法令違反を犯した事実そのものからは逃れられず、ブランドは大きく傷ついた。
「二度と(不正が)起こらないよう社内を引き締めながらやることが必要だ」
スズキの鈴木俊宏社長は今月12日の会見で、再発防止に向け改めて意識改革に取り組む姿勢を強調した。
スズキの燃費不正では最終的に26車種、約214万台で法令とは異なる測定を行っていた。ただ、同社がその後、改めて正しく測り直した結果、全車種でカタログ上の燃費を上回っていたことが分かり、販売を継続。データ改竄で販売休止に追い込まれた三菱自とは異なり影響は小さかった。
だが、三菱自とスズキで立て続けに発覚した軽自動車を中心とした燃費不正問題により、燃費表示に対するユーザーの懐疑心はより強まった。それまで燃費の良さばかりを競ってきた軽メーカーでは、別の価値訴求に軸足を移す動きが顕在化し始めている。
スズキは今年2月に全面改良して発売した主力の軽「ワゴンR」で、ガソリン1リットル当たりの最高燃費を従来に比べ0.4キロ向上させた。しかしテレビCMでアピールしたのは、簡易型ハイブリッド車(HV)システム搭載など環境性能だった。
ダイハツ工業が5月に全面改良した軽「ミラ イース」も、対歩行者事故や誤発進の回避につながる自動ブレーキを大半のグレードに標準装備するなど、燃費性能よりも安全性を前面に押し出した。昨年の今ごろ、業界を揺さぶった燃費不正問題は、燃費一辺倒だった競争のあり方を変える契機となった。(今井裕治)