総量規制の“対象外”
消費者金融と銀行カードローンの貸出残高が逆転したのは2011年度のことだ。
金融庁で開かれた多重債務問題に関する有識者懇談会で示された資料によると、同年度末の銀行カードローンの貸出残高は3兆3124億円。消費者金融の3兆792億円を初めて上回った。「銀行」という安心なイメージに加え、30分程度で借りられる利便性が受けた。
きっかけは、10年の「総量規制」の導入だった。消費者金融など貸金業者は、年収の3分の1を超える貸し出しが禁じられた。
規制の効果はてきめんだった。同時期に上限金利が、「年29.2%」から「貸付額に応じ15~20%」に引き下げられたことも相まって、貸金業者による貸出残高は減少する。その反動で台頭したのが、総量規制の“対象外”とされた銀行カードローンだ。
当時の銀行は、個人向け貸し出しは住宅ローンを除くとほとんどなかったという。このため、「銀行への総量規制は必要ない」というのが共通認識だった。
今や銀行カードローンのテレビCMや電車の中づり広告を目にしない日はない。サラリーマンでにぎわうJR神田駅(東京都千代田区)前のメガバンク支店をのぞくと、全てのATM(現金自動預払機)にカードローンの広告が掲げられていた。
7年前の総量規制などで大手消費者金融の経営は悪化。大手銀行は次々と消費者金融を傘下に収め、個人向け貸し出しのノウハウを取り込んだ。