第一生命経済研究所顧問の大森泰人(58)はそうこぼす。大森はかつて、金融庁の担当参事官として総量規制を導入した中心人物だ。
「回収は二の次。とにかく営業ノルマを達成しなければならなかった」
借り手の姿見えず
大手行関係者はこんな反省の弁を口にする。金融緩和による金余りで主力の企業向け融資が伸び悩む中、年収が少ない人への過剰なカードローン貸し付けに目をつぶった恐れはある。
大森も「(貸し金業者に)丸投げすることで、銀行は借り手の姿が見えていないのではないか」と危惧する。
6月15日に全国銀行協会会長に就任した三菱UFJフィナンシャル・グループ社長の平野信行(65)は同日の記者会見で、銀行カードローンへの法規制強化に反対の考えを強調する一方、「一部に行き過ぎがあったことは私どもも懸念している」と釈明に追われた。
全銀協が5月に実施した会員銀行へのアンケートでは、3月以降に融資限度額を引き下げたのは7%にとどまった。
大森は最近、総量規制を導入した当時の大手行幹部との雑談を思い出す。
幹部「銀行は規制の対象ではないですよね」
大森「今のところはね」(敬称略)