
JTは「プルーム・テック」の専門店を開き、ファンの獲得を狙う=東京・銀座【拡大】
しかし日本では、ニコチン入りのリキッドは「医薬品及び医薬部外品」に当たり、個人輸入を除き販売が禁じられている。3大メーカーが商品化するのは難しい。そこで各社は、たばこ葉を使った「たばこ製品」として加熱式たばこを開発し、電子たばことの競合が少ない日本が主戦場となっているわけだ。
スイスも日本と同様の法規制だといい、BATはグローの有力市場の一つに位置付けている。ただ「陸続きのドイツやフランスへ越境して簡単に購入できるので、電子たばこも日本より普及している」(BAT日本法人のロベルタ・パラツェッティ社長)のが実情。日本市場は四方を海に囲まれ、重要性がより高い。
選択肢広がる「乱戦」の可能性は
現在、3社の専用たばこやたばこカプセルは、紙巻きたばこの旗艦銘柄(JT=メビウス▽PM=マールボロ▽BAT=ケント)と同じ名称で、近いイメージの風味に設計している。その事実からも、各社の力の入り具合がよくわかる。
過去5年間で、BATは次世代たばこの開発に1000億円以上を投じた。JTも「今年や来年がゴールではない。『10年戦争』の始まりだ」(小泉光臣社長)と力を込め、研究開発費の増額を明らかにしている。
喫煙人口が年々減る中、加熱式が国内たばこ市場に占める割合は急拡大している。2016年末の約5%から17年末には15%まで上昇する見込みで、20年には30%に達するとの見方もある。
しかし専用たばこのバリエーションが増え、さらには他社デバイス向けの商品も発売し合う「乱戦」にまで発展すれば、紙巻きから加熱式へのシフトは一層加速する可能性がある。
東京五輪・パラリンピックに向けた受動喫煙対策の議論も高まる中、加熱式たばこのシェア争いがさらに過熱していくのは確実だ。(産経新聞社経済本部 山沢義徳)