
窒化ガリウム(GaN)を活用した高効率ACアダプター=東京都港区【拡大】
また、国連を通じて国際的に求められている環境ニーズの動向に接触する機会が増え、今後立案していく環境技術戦略の有効性が高まるとの判断もある。
富士通は約6万3000件の知的財産を保有する。このうち環境技術に関するもので、特に途上国などで将来性が見込める特許約200件を選出。今年度末までにワイポ・グリーンに順次登録していく予定だ。「1社当たりの登録数としてはトップクラスになる」(同社)という。
富士通が移転に向けデータベース登録を考えている候補技術としては、窒化ガリウム(GaN)を活用した高効率ACアダプター▽光触媒技術▽リン酸鉄系リチウム二次電池用正極材料-などが既に挙がっている。
省エネで急速充電
この高効率ACアダプターは、スイッチ素子に動作抵抗の小さい窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ(GaN-HEMT)を使用。アダプターを使ってモバイル機器を充電すると消費電力を5割削減できる上に、従来の3分の1の時間での急速充電も可能になるという。
富士通は、ワイポ・グリーンでのマッチングが決まれば、仕様書などノウハウ提供から試作品の製作まで全面サポートの下で技術移転を進める。
高い評価を得ている同技術だが、同社単独で普及を図るのは困難とされ、担当者は「技術移転をてこに普及に弾みがつくことを期待する」と話している。
富士通は、50年に実質的な二酸化炭素(CO2)排出量ゼロを実現する「中長期環境ビジョン」を策定。人工知能(AI)を用いた電力使用の制御など省エネの徹底や、再生エネルギーの利用拡大を掲げた。
その具体的な環境行動計画(16~18年度)では、革新的な環境技術の開発を進めると明記。今回、国際的枠組みを活用して環境技術の普及をグローバルに進め、脱炭素社会の実現などSDGs達成に貢献する考えだ。