こうした漏電事案では、老朽化によりカバーの絶縁性が低下したことが疑われる。しかし、同社は同種の送電線の耐用年数を30年としており、「ただちに老朽化とは言いかねる」(担当者)と否定。担当者は「何らかの原因でカバーに傷が入り、電車通過時の高電圧状態を何度も繰り返すうちに電気が漏れ始め、漏れた電気でカバーが加熱されて劣化が早く進むことがある」との仮定を述べた。
国内でも先駆けの地下区間 設備老朽化を問題視
トラブル現場となった田園都市線渋谷-二子玉川駅間(二子玉川駅自体は地上駅)は「新玉川線」として昭和52年4月に開業。地下鉄以外の私鉄としては国内でも先駆けて開業した地下区間で、今年で40年が経過した。
昨年4月以降の約1年半の間に起きた同社の輸送障害は今回を除き12件で、このうち旧新玉川線区間は5件が集中している。昨年8月には世田谷区の新桜町駅で信号が赤のまま変わらなくなる信号故障が発生。今年には渋谷駅で分岐器から発煙するトラブルが2度も起きた。10月19日朝には三軒茶屋駅構内の配電設備で停電が起き、約12万7000人に影響した。
老朽化が原因と特定できたのは5件のうち2件にとどまるが、担当者は「以前は全線で年2、3件程度だったが、明らかにトラブルが増えた。設備の老朽化がいろいろな現象の原因になっている」との見方を示す。事態を重く見た東急は対策会議を設置。非常用発電機の設置や、ダウンしても送電を続けられるシステム改良などを検討していた。
「先行整備された地下区間であることがネックになっている」と担当者。東急は過去30年以内に東横線や大井町線など地上区間の多くで改良工事を行い、この施工区間では同時に信号や送電線などの設備も更新してきたからだ。