17年に社長に就任すると、「選択と集中」の実践者として手腕を振るったが、西田氏が率いたパソコン事業で、部品取引を悪用した利益のかさ上げ疑惑は持ち上がった。
台湾の製造委託先に部品を販売し、完成品を買い戻す「Buy-Sell(バイセル)取引」を採用。部品の調達価格が外部に漏れないよう一定金額を上乗せした価格で販売し、その分を上乗せした価格で買い戻していたというのだ。
20年ごろからは四半期ごとの決算期末に、部品の価格をつり上げた上で大量販売して過大な利益を計上し、翌期に完成品を買い戻して利益を消す会計処理を行っていたとされる。
「昔はバイセルという言葉はなく、普通の部品の取引だった。僕もこの件(不正会計問題)が起きてからバイセルなんて言葉は初めて聞いた」
西田氏はこう振り返った。
「どれだけ利益を出そうが勝手」
証券業界関係者によると、パソコン事業では佐々木則夫社長(当時)時代の21年以降、バイセル取引の悪用によって得られる一時的な利益を見込んだ予算を作成していた。予算は各事業部門ごとに作成していたが、パソコン事業だけは会長だった西田氏と佐々木、田中久雄元社長が主導して作っていたとされる。
営業利益の推移は四半期末の3、6、9、12月に急増し、翌期に急減する不自然な動きを繰り返し、24年9月以降の四半期末は営業利益が売上高を上回る異常な状態となっていた。
監視委は翌期に消される見かけ上の利益だとして「明らかな粉飾」とみていたが、西田氏はこう反論してみせた。
「代金はちゃんと支払ってもらう。そのときに部品の価格がいくらであろうが、どんなに高い値段であろうが、どれだけ利益を出そうが勝手。台湾(の製造委託先)の人は東芝にちゃんとお金を払っている。それに対し利益が出る。それを計上するのは当たり前のことで禁じることはできない。会計原則上ね」