京都府南東部の山間部に位置し、宇治茶の生産地として知られる和束(わづか)町に、インバウンド(訪日観光客)向け宿泊施設の建設計画が浮上した。名乗りを上げたのは、高級ホテルを展開する星野リゾート(長野県軽井沢町)。観光資源に乏しく交通の便は悪いが、星野佳路(よしはる)代表は「茶畑の美しい景観がオンリーワン。観光客を呼び込めるツールだ」と太鼓判を押す。星野リゾートといえば、「あいりん地区」で知られる大阪・新今宮にリゾートホテルを整備することが決まっている。和束でも地域活性化の起爆剤になると期待が高まる。(勝田康三)
「宿泊業界の雄」登場
和束町で数少ない宿泊施設、京都和束荘に1月末、星野代表、堀忠雄町長、仲介にあたった山田啓二知事の3人が顔をそろえた。星野リゾートによる宿泊施設の整備に向けたパートナーシップ(連携)協定書に調印し、笑顔で握手を交わした。
会見の席上、星野代表は和束進出の理由として、文化庁の「日本遺産」に認定された茶畑の美しい景観▽日本茶という日本文化のコンテンツ▽関西空港のほか大阪や京都、奈良からのアクセスが良い-の3点を挙げた。
「世界から観光客を呼び込める魅力がある。オフシーズンもなく、バランスの取れた集客も可能だ」と強調。そのうえで単年度の入り込み数ではなく、中長期的に安定的な集客を目指した戦略を検討していく方針を示した。
山田知事は「新しい観光を作り出すスタートの日」、堀町長も「滞在型の観光につながる連携協定を結べ、まちづくりへ大きな弾みになる」と持ち上げた。
しかし、会見での説明からは建設場所や規模、オープン予定日、ホテルか旅館かという業態など、計画の概要が全く見えてこない。そのため、報道陣から質問が相次いだが、星野代表は「連携協定を結んだ和束町、京都府との3者で一緒に考えていきたい」との説明を繰り返し、今後、町民も巻き込んで具体化させていくとした。