なぜ、「ペットボトルに詰めた水道水」が売れたのか (2/5ページ)

 東京の水道水で日本酒を作れる

 こう考える人も多いだろう。

 「だって水道水はトリハロメタンとかもあって心配だ。カルキ臭い感じもするし」

 「ミネラルウォーターの方が、ミネラル成分が入っていて健康にいいから」

 これらは思い込みである。いまの水道水は安全だ。成分的にも問題はない。

永井孝尚『なんでその価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』(PHP新書)

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 現実に水道水で酒造りをしている酒蔵がある。東京港区芝の「東京港醸造」だ。この酒蔵は4階建てのビル内にある。ビルの4階で洗米・蒸米→2階と3階で酒の仕込み→1階で瓶詰め、という流れ作業をスムーズにできるようにしている。そして酒仕込みには、東京都の水道水を使っているのである。

 杜氏いわく、「水道水には酒造適性がある。東京の水は優しいお酒の味に仕上がる」。東京の水道水は中硬水で、京都伏見の水を使ったのと同じようにソフトな味に仕上がるそうだ。地元の人にもおいしいと好評だという。杜氏といえば米と水のプロ。そのプロが「水道水はおいしい」といっているのである。

 さて、この衝撃の事実がわかったあなたは、ミネラルウォーターを100円で買うのをやめて、タダ同然の水道水を飲むようになるだろうか? かくいう私は、この事実を知った後でも、気がつくと相変わらずミネラルウォーターを買い、「おいしいなぁ」と飲んでいる。蛇口から出る水道水はなかなか飲もうと思えない。おそらく、あなたも同じだろう。

 なぜ私たちは、味はまったく変わらないのに、わざわざ手間とお金をかけて水道水よりも1000倍も高いミネラルウォーターを買うのだろうか?

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