なぜ、「ペットボトルに詰めた水道水」が売れたのか (5/5ページ)

100円のミネラルウォーターは「おいしくて安全」と定着した(写真=『なんでその価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』)

100円のミネラルウォーターは「おいしくて安全」と定着した(写真=『なんでその価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』)

 一方で、「まずくて危険」といわれた全国各地にある水道局も努力をしてきた。たとえば東京都水道局は、高度浄水設備を整備して品質向上に努めた。そして水道水は目隠しテストでもミネラルウォーターと変わらないと評価されるようになった。しかし、いったん広がった「水道水はまずいし危険」というイメージはなかなか変わらない。若い人たちの中には、水道水を飲んだことがないという「飲まず嫌い」の人もいる。

 ボトルに詰めたら水道水が売れた

 水道局にとって大ピンチ。水道局はさすがである。これをチャンスに変えたのだ。なんと水道水をペットボトルに詰めて「水道水ボトルウォーター」として売り出した。

 「東京水」(東京都水道局) 500ml 103円(税込み)

 「はまっ子どうし The Water」(横浜市水道局)500ml 110円

 「さいたまの水」(さいたま市水道局) 475ml 110円

 飲んだことがある人もいるだろう。実はこれらは、水道水ボトルウォーターだ。「ペットボトルに詰めると、水は高く売れる」とわかった水道局は、それをしたたかに利用したのだ。おかげで水道局は水道水を1000倍高い価格で売れるようになった。

 このように、お客さんはアンカリングを基準にして、商品の品質と価格を判断する。価格戦略を考えるには、人の心理まで考える必要があるということだ。このときに行動経済学は役立つ。

 アンカリングをうまく生かせば、高く売れるようになるのである。

 永井孝尚(ながい・たかひさ)

 マーケティング戦略コンサルタント

 1984年慶應義塾大学工学部(現・理工学部)卒業、日本IBM入社。マーケティング戦略のプロとして事業戦略策定と実施を担当。さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当。2013年に日本IBMを退社。ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、講演や研修を通じてマーケティング戦略の面白さを伝え続けている。主な著書にシリーズ60万部の『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部の『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)などがある。永井孝尚オフィシャルサイトhttps://takahisanagai.com

 (マーケティング戦略コンサルタント 永井 孝尚)(PRESIDENT Online)