なぜ、「ペットボトルに詰めた水道水」が売れたのか (3/5ページ)

 なぜ人間は「合理的ではない」行動をするのか

 どう考えても、この現象は合理的には見えない。自分でも「合理的ではないなぁ」とわかっていても、行動が変わらないのである。

 この謎を解き明かすヒントがある。それは「行動経済学」だ。ミネラルウォーター問題のように、人間は合理的に行動していないことが実に多い。健康に悪いとわかっていながらタバコをやめられなかったり、肥満の敵だとわかっていながらつい大きなアイスクリームを食べてしまったりする。

 しかしこれまでの経済学は、「人間は常に合理的に考え行動する」という前提で考えられてきたので、「合理的ではない」人間の行動を説明できなかった。たとえば歴史上、人々がバブル経済で異常に高騰した土地や株に、熱狂して大金を投じた揚げ句、大損する現象を、従来の経済学では説明できなかった。

 そこで合理的でない人間の行動を解き明かそうとするのが「行動経済学」だ。行動経済学は、2002年に行動経済学者のダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞して、広く知られるようになった。行動経済学を理解すれば、価格に対するお客さんの行動も理解できるようになる。

 数字に影響される「アンカリング効果」

 ミネラルウオーター問題は、カーネマンが実験で実証した行動経済学の「アンカリング効果」で考えると、解き明かすことができる。船の「いかり」を「アンカー」という。「アンカリング」とは「いかりを下ろす」という意味だ。「アンカリング効果」とは、いかりのように人の心がある数字につなぎ止められる現象だ。

こんな実験をした