生地にも味付けて最後まで濃厚に
こうしてスコーンを全面刷新し始めた内田さんら。従来、スナック菓子のリニューアルでよく取られる手法はフレーバーの変更だ。投資も少なくて済み、期間限定品なども打ち出しやすい。ただ、スコーンを巡っては「小手先のリニューアルでブランドは生まれ変われない。商品の中身もマーケティング手法もフルで変える必要があると考えた」(内田さん)。
まず、ブランド刷新に際して既存ユーザーを取りこぼさず、さらに支持を厚くするため、スナック自体を改良した。もともとスコーンはコーンでできた「クランチ」という味のない生地の一種に、「シーズニング」と呼ばれるパウダーを付けて味付けしていた。
ユーザーからは「最初は濃い味がしておいしいが、(1片のスコーンを食べていくと)最後の方は味が無くなる」という声が上がっていた。そこで、クランチにもスイートコーンのパウダーを練りこませて生地自体に甘みや香ばしさを付け、売りである味の濃さが長続きするようにした。
若者向けに振り切る
さらに、本丸である高校生向けマーケティングで課題となったのが「情緒的価値」をどう感じてもらうか、だった。今回の高校生へのアンケートでは、スコーンに対して「濃厚」「食べ応え」といった舌などで感じられるイメージが挙がった。一方で「かわいい」「かっこいい」といった、情緒的なイメージはほとんど出なかった。
「メインユーザーである30代なら『あの面白いCMのお菓子』というイメージを持ってくれているが、CMを知らない今の若者にはそれがない。心のつながりが欠落しているので自分たちの菓子だと思ってもらえない」(内田さん)。
まず、赤い「スコーン」の文字でおなじみのパッケージを捨てた。商品名を大きく書いてシンプルなデザインにしたうえで、ブランド初となるマスコットキャラクターをあしらった。ゴリラ風の「ハラペコング」だ。見た目が変わっても既存ユーザーは脱落しないと踏んで、若者に受けそうな分かりやすさに振り切った。
若者向けマーケティングの定番である、SNS上で話題になるようなキャンペーンも欠かさない。スマホを汚さずに食べれるようにと「指サック」を、「スコーンから離さないぞ」というメッセージを込めてスコーン型の抱き枕をプレゼントするWebキャンペーンを始める。「若者はスマホから離れられない生活のためスナックを敬遠している。彼らに真剣に寄り添うため解決策としてプレゼントする」(内田さん)という。