日本からGAFAが生まれなかった根本原因とは 経営用語の盛衰で見る歴史的変化 (3/4ページ)

「MBA」が得意とするのは巨大組織の舵取り

 さてMBAは、以上のビジネス・ブームの第2期の産物である。第2次産業革命が第1次産業革命と異なるのは、その結果としてスタンダード・オイル、J.P.モルガン、USスチール、デュポンといった巨大な近代企業が、さまざまな産業において続々と誕生したことである。

 そして社会は、成功をおさめた産業界の巨人をいかにコントロールするかという課題に新たに直面することになる。国家レベルでは、市場メカニズムの維持が課題となり、カルテル規制や独占規制などがはじまる。個々の企業にあっては、創業者が残した巨大組織の舵取りを引き継ぐ人材が必要となる。これにこたえて、ハーバード大学をはじめとするアメリカの諸大学がMBAという教育プログラムをつくり、拡充していく。

 そこでMBAの基幹科目となっていったのが、先に挙げた戦略、マネジメント、マーケティング、ファイナンス、会計などの諸学である。図1では、これらの言葉の使用頻度が、20世紀の初頭から高まっていったことが見てとれる。

 それだけではない。さらに大きな転換が、ビジネス・ブームの第3期の到来とともに起きる。

70年代以降に重要な言葉は「市場」だった

 今回の検索で用いた単語の選択にあたっては、対となる概念を取り入れることに留意した。組織(organization)と市場(market)はともに、社会にあって人々の協調と競争を引き出す制度にかかわる概念である。

 20世紀の初頭以降は、組織--すなわち目的が共有され、指示や命令がはたらく場--への言及が優勢な時期が続いた。しかし1970年代以降になると、市場という組織の外部に広がる場への関心が高まる。

 マネジメント(management)と管理(administration)という、人々を動かし、事を成し遂げる方法にかかわる概念についても、1970年代以降になると、より柔軟で、創発性に富んだマネジメントという言葉--この言葉には「飼いならす」という、組織(畜舎)の外にある市場(野生)への対処のニュアンスがある--の使用頻度が高まる。

 そして、マーケティング(marketing)、ファイナンス(finance)、会計(accounting)といった各種のビジネスの職能にかかわる言葉を押さえて、戦略(strategy)という、これら職能に横串を指し、変化への反応を統合的に行うことにかかわる言葉の使用頻度が1970年代の前後から急速に高まっていく。

 第2期のビジネス・ブームが20世紀中盤の社会にもたらしたのは、近代企業という、機械仕掛けの装置のような巨大組織と、その管理の問題への関心だった。しかし1970年代以降になると、この組織の外側に広がる市場という大海原、そしてそのもとでのビジネスの舵取りにかかわる戦略やマネジメントといった概念が注目を集めるようになっていく。

日本企業が絶頂期の裏側でなにが起きていたか