大震災の予兆
東日本大震災の約10年前のGPSデータでは、宮城県沖から茨城県沖にかけて強い固着域があった。しかし従来の地震学は、同じ場所では過去と同規模の地震が起きるのが常識だったため、東北太平洋岸でM9は想定されなかった。
この固着は大震災の数年前から福島県沖などで弱くなっており、西村准教授は「今から考えると大震災の予兆だった」と悔やむ。04年のスマトラ島沖地震(M9・1)もM7~8級の場所で発生していた。
大震災はなぜ巨大化したのか。東京大地震研究所の佐竹健治教授(地震学)は、M7級の宮城県沖地震で解消しきれなかったひずみが数百年かけて蓄積され、繰り越し分の累計が限界に達すると断層が大きく滑る「スーパーサイクル説」を提唱している。
一方、水が巨大地震を引き起こす可能性も指摘されている。プレート境界の比較的浅い場所には、断層の隙間に地殻から放出された水分がある。境界深部の固着域が滑り始めると、断層運動に伴う摩擦熱が浅部に伝わり水が膨張。水圧が高まることで、断層が上下に押し広げられて摩擦が弱まり、海溝付近まで一気に動くという仕組みだ。