もともとJR鹿児島線の一部だった肥薩おれんじ鉄道は平成16年、九州新幹線の部分開業に伴い、JRから切り離された三セクとして開業した。
多くの乗客は新幹線に流れた。JR九州が運転士を出向させるなど支援しているが、毎年の赤字は6千万~2億6千万円にも上る。平成23年度決算こそ、JR貨物が支払う線路使用料が増え、初めて最終黒字を達成したが、累積赤字は9億円を超える。
経営環境は厳しさを増す。輸送人員は17年の177万人から23年に145万人まで2割も減少した。さらに今後、10年間でレールの交換など25億円のコストが必要という。このままではいずれ、経営は立ちゆかなくなる。
それだけに、おれんじ食堂へかける期待は大きい。
肥薩おれんじ鉄道の井上幸一営業部マネージャーは語る。「地元の人が何気なく見て、食べているものでも、外から来た人は感動する。多額の投資をせずに、地域の眠っている宝を観光に生かす食堂車は、起死回生の切り札です」
食堂車は予想を上回る好調で、半年先まで予約が次々と入っているという。