これは、それぞれの軸を1~9段階に分け、例えば縦軸の9は人間関係を非常に考慮することを意味し、1は放任主義と言いますかその逆です。普通に考えると、横軸と合わせて9×9が理想的なリーダーのように思えますが、そうではなく、企業の事業内容によってさまざまです。私はマネジャーを対象にした大学のセミナーで、このシステムを用いたことがありますが、マネジャーは自分自身の能力については厳しい見方をする一方、他者に対しては自分より高く評価していることがわかりました。参加しているマネジャーは何年も部下を指導した経験のある人たちで、これは極めて重要で興味深い結果だと思います。
次に、この2ファクター理論をもとにした社会心理学における新しい2つの発展がありますので、それを説明します。1つはリーダーシップとフェアネス、もう1つはリーダーシップと性別についてです。
最初のフェアネスですが、2011年に発表された「ソーシャルサイコロジー&オーガニゼーションズ」という本があります。この本の2人の著者、クレーマー(David deCremer)とタイラー(Tom R. Tyler)は、フェアネスに3つの要素があると分析して、それを決定の中立性、従業員の信頼、従業員への礼儀ある対応-だとしています。この3要素をまとめますと、リーダーは従業員が納得できるような形で説明し、自信に満ちて行動するほど、従業員はリーダーに従い、成功を信ずるということです。同時に従業員は決定の前に自分たちの意見を聞いてほしいと思っています。つまり、リーダーシップとフォロアーシップは背中合わせだということです。
2つ目の性別ですが、アシュクラフト(Karen Lee Aschcraft)は組織やマネジネント、仕事が女性に与える影響の大きい部分に関して、10のポイントをまとめています。それらは「男性の規範を基準にしてつくった組織は、女性にとって構造的なデメリットとなる」「男性の仕事、女性の仕事という単純な二分化は企業の業務組織を理解するのに適さない」などです。